早稲田大学特任教授が射抜くワイド1点

[2012年5月20日]

【オークス】心情と馬券は別物

大学を退職し筆一本でしのいでいくつもりなので、文芸家協会という法人団体に入会した。慎太郎も五木寛之も大江健三郎も会員であり、総勢2500以上の会員がいる。年1回の懇親パーティーがあるというので、出席してみた。もちろん有名作家が参加するはずがないと思っていたら、誰でも知っている浅田次郎がいた。超売れっ子の人気作家だから声をかけるのがはばかられるかもしれない。だが、私はつかつかと近寄り「浅田さん、競馬場以外でお会いするとは」と話かけた。「大学をやめて、どこか私大に再就職なさらないのですか」「いやもう大学は卒業です」「ずいぶん潔いんですね」と世間話がつづく。


ダービーや有馬記念などの大レースで同じ部屋に招待されるので顔なじみなのである。でも、競馬場で見かける浅田さんは馬券に熱中して真剣そのものだから、話かけづらいところがある。ところが、こういう酒宴の席だとけっこう愛想がいい。もっとも酒はほとんど飲まないと聞いたことがあるから、社交的な一面もあるのかなあ、感心したのである。


帰路、居酒屋「青夷」の暖簾をくぐる。いつもどおり「お待ちしておりました」と歯の浮くようなお世辞が飛び出す口撃機関銃のヤマ。「オークスは千八以上を走ったことにない馬は苦戦する」なんぞのデータをちらつかせながらの長口上が始まる。だから、桜花賞馬(14)ジェンティルドンナはかなりの減点だという。どうやらデータを無視して桜花賞3着馬(1)アイムユアーズに気があるらしいが、データ派頭領としての沽券が許さないのか、さえない表情でしおらしい。「たぶん(9)ヴィルシーナから狙いますよ」というから、なんとも歯切れがよくない。


私はディープインパクト産駒を応援するが、心情と馬券は別物。ここではディープを負かした憎き唯一の国内馬ハーツクライの産駒を狙う。マイルしか走ったことのない(13)サンシャインより

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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
元東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授。
現在は早稲田大学特任教授。
放送大学客員教授。専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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