第4回 大魔神、夢を語る [2011年8月3日]

水上では、馬主さんとして、今の夢というのはどのあたりにあるのでしょうか?

佐々木やっぱりダービーに出す。いや、どうせ出るなら勝つまでいきたいですね。

水上プロ野球の世界では、才能とか努力とか全てご自分にかかっていたわけですが、こればっかりはどうにもなりませんからね。成功してきた佐々木さんとして、この歯痒さというのはどういうものなのでしょう。

佐々木自分に責任がないという面もありますから、ある意味で楽ですよ。野球の時にプレッシャーをたくさん背負いましたから。また違ったワクワク感がたまらないですけどね。

水上レース中に愛馬が不利を受けた時などは冷静でいられますか。

佐々木やっぱり腹が立ちますよ。寄ってきやがってとか。さすがに邪魔した騎手を乗せないなんてことはしませんけどね(笑)。
水上将来的に、ご自分が持っていた馬の子供を持ちたいという願望はありますか。

佐々木それはあります。僕は尻尾のないハルーワスウィートという馬が現役時代から大好きでして、あの馬の子供は全部ほしいんです。吉田勝己さんが『こんだけ好かれたらしょうがない。佐々木君のもんだ』と諦めているくらいに。なので、その子供もずっと持ち続けていきたいですよ。

水上そうなるとハルーワスウィートと兄弟のフレールジャックのラジオNIKKEI賞勝ちも格別だったのではないですか。

佐々木他人事ではなかったですね。そのハルーワスウィートの子供であるヴィルシーナが函館でゲート試験を受かりまして、札幌の芝1800Mでデビューを予定しています。その下はアグネスタキオンをつけていて、やっぱりいい馬なんですよ。

水上セレクトセールが目前ですが(取材日が7月7日)、ここまで馬が好きということであれば、セール中はもう至福の時ですよね。

佐々木もう下見に二回行っていますから。面白いのが、2ヶ月前、1ヶ月前、セリになった時と馬が全然違うんです。当日はビッカビカで『あの馬がこんなになったの?』と驚きますよ。当日だけ見ていたらあれは騙されます。ちゃんと下見しておかないと(笑)。

水上二回も行って臨まれると。凄い情熱ですよね。プロ野球選手や芸能界から馬主さんになられる方もいますが、ちょっと格が違うなという感じがしますね。もともとデータや資料で馬券を買う時も物凄く研究されていて、その細心さというのは…。

佐々木野球に生きなかったですね(笑)。

水上いや、細心さがあったからこそ、頂点まで行かれたんだなと。ただ豪快なだけではあそこまで行けませんよ。

佐々木野球の時は何も考えていませんでした。データは嫌いでしたもん。野球はなるようにしかならんという感じでしたよ。

水上競馬ラボの会員さんの中にも、野球が好きな方もたくさんいらっしゃると思いますので、最後に少し野球の話題も伺いたいと思います。もう、オールスターも間近になりましたが、解説者の目で観られてきて、今年のプロ野球はどうお感じになられていますか?

佐々木とにかく「投高打低」ですね。ひとつボールが変わっただけで、これだけ変わるものか?巨人がこれだけ弱くなるものか?と感じさせられて、改めて面白い世界だと感じました。

水上ボールが変わることは以前からアナウンスされていましたが、これだけ野球が変わることは予測されていましたか?

佐々木いや、ここまでホームランが出ないとは思わなかったですね。

水上主旨として、メジャーリーグ基準に近づける意味でボールを変えるとのことでしたが、佐々木さんは向こう(メジャーリーグ)でもやられていて、ある程度、今のボールがどのようなものかご存知だと思います。

佐々木昔、日米野球でアメリカがこっちに来た時、アメリカのボールを使って試合をすると、日本のチームは全然ボールが飛ばなかったですからね。子供と大人のような…。だから、そこに近づけてしまうと、日本の野球が面白くなくなっちゃうかなと。

水上でも、シーズンが始まってしまうと、野球解説のお仕事もありますから、なかなか競馬へ割く時間の自由が利かないのではないでしょうか?

佐々木野球解説より、競馬ですから(笑)。

水上でも勝負の世界に身を置いてこられた方が馬主さんをやられると、見えてくるものが違うこともありますよね。

佐々木だから騎手のことも、現役を退いて一歩引いてみることができるから、わかると思うんです。ちょっと話は逸れますが、僕らが高校生の頃は、野球にもまだ根性主義の名残があって、水飲ませてもらえないし、500球の投げ込みをさせられたりとかもしました。確かに今はそういうやり方に批判はありますが、でもだからこそ鍛えられた部分はあるんです。 今の子が弱いというのは、そういう練習を否定してきたからじゃないかと。これは馬や騎手にも、少しは共通しているところがあるように思うんですよ。

水上なるほど。ただ野球と違って馬はモノを言えないですから、全部、人間が面倒をみてあげないといけないですよね。

佐々木調教師の方も『馬の雰囲気を見てあげないといけない』と言っていましたからね。

水上佐々木さんに買われた馬は幸せですよね。馬主さんは多かれ少なかれ、自分の馬をかわいく思っていると思いますけれど、広い視野でご覧になっている点が素晴らしいし、個人馬主さんにはそうあってもらいたい。今までの旦那衆というような振る舞いでは通用しない時代ですからね。あと伺いたかったのは、レースの好みとかはあるんでしょうか?

佐々木短距離は早く終わっちゃうから面白くないので、長距離がいいですね。

水上ご自分が持つ馬となると、ステイヤーだと出世が遅いとか、なかなか難しい部分があるじゃないですか?そういった部分は好みとは別ですか?

佐々木僕は何かに凝ったら、目がしばらくそっちに向いてしまうんです。例えばダンスインザダークの仔を買ったら、また、ダンスになってしまうんです。今は色々違った目でみなくちゃいけないなと思い始めていますが。 最近、少し気になっているのがメイショウサムソン。産駒の評判も良いみたいですが、確かに写真を見る限り、いい仔を出しているんですね。セレクトに出る馬でもサムソンの仔とは思えないようなスラっとした馬がいて、バランスが良いんですよ。お母さん方が出ているのかなと。

水上だから、馬って面白いですよね。お父さんの現役時代のイメージで見ると失敗する事も多いですから。あとはどのあたりに目を付けていらっしゃいますか?

佐々木ネオ(ユニヴァース)や(アグネス)タキオンの仔がいるので、次はハーツクライの仔がいいのか?う~ん・・・と考えているところですね。

水上関西じゃないと駄目な血統もいて、スペシャルウィーク産駒の関東馬に走る馬がほとんどいないとかあるんですが、ハーツクライ産駒も関西厩舎の方がいいような気がします。

佐々木そういえば、セールではあれを狙いたいんです。タニノギムレットにサファイヤコースト!サファイヤコーストの仔には思い入れがあって、実は前に毛利(喜昭)さんに競り負けたことがあるんですよ(モンテトウヌルソル)。あの馬は脚が曲がっていたし体重も重かったので、もしかしたら脚がもたないんじゃないかとも思っていましたが、今回は470~80キロの馬なので面白いかなとは思っています。馬を見ても凄く良かった。そういえば、種牡馬としてのギムレットはあまり人気がないじゃないですか。なぜだと思います?

水上ウオッカが出た割には確かにそうですね。他にもアブソリュートやスマイルジャックもいましたが、決して確率のいい種牡馬ではないと思われているのかもしれないですね。

佐々木僕もグレイスファミリーで失敗しましたからね(笑)。

水上種牡馬としての好みはあるんでしょうか?それとも、あくまで産まれてきた仔馬を見て決めると。

佐々木やっぱり、馬の体を見ることが重要ですね。ハルーワスウィートはお母さん自体が好きだったので、話は別ですけれど。

水上ここまで愛情を持ってやっていたら、どこかで恩返しがあると思いますよね。でも、高馬だと厩舎も調教をやるのに気を使うでしょうし、種牡馬によってもその傾向が違いますよね。例えばダンスインザダークだと、晩成タイプが多いので、あまり早い時期からやってしまうと、成長が止まってしまいますし。そう考えると、一頭一頭によって、調教のスタイルも変えるべきでしょうし、その辺りは難しいですよね。

佐々木やっぱり競馬は奥が深いし、面白いです。

水上お話しを聞いていると、佐々木さんにはもっともっと競馬の世界にのめり込んで欲しいと思いますよ。競馬の話題はいくらあっても足りませんが、そろそろお時間ということで、今日はありがとうございました。最後に競馬ファンへ向けて、メッセージをお願いします。

佐々木どの馬も頑張っていますので、馬券もそうですが、まず馬を愛して欲しいなと。競馬場で見るのもいいけれど、機会があれば牧場にまで行ってもらえれば、馬の優しい一面が見られると思うんです。競馬の時って本当に凄い眼をしていますからね。その時の眼と、牧場でゆったりしている時の顔は全然違いますから、そういうところを見てほしいですね。

水上馬への愛情がにじみ出ていて感激しました。

佐々木本当にかわいいんですよ。馬は人をわかるんですよ。僕がデカくて珍しいからかもしれないですけれど、パドックにいると“アッ”てこちらを見てくれますから(笑)。

佐々木主浩プロフィール

伝家の宝刀・フォークボールで日米通算381セーブの金字塔を打ち立てた“大魔神”2006年11月に馬主登録を行い、僅か5年半後の2012年2月にはクイーンカップで所有馬のヴィルシーナが1着となり、馬主として初めて重賞競走を制覇すると、さらに翌々週には阪急杯でもマジンプロスパーが優勝。2013年5月12日ヴィクトリアマイルでヴィルシーナが優勝し、初のGI競走制覇を果たす。

水上学プロフィール

1963年千葉県生まれ。東京大学文学部卒。エフエム東京のディレクターや、競馬場場内エフエム放送であるターフサウンドステーションの制作構成などを経て、グリーンchの構成作家に。現在は競馬ライター。初めて見たレースは1971年の日本ダービー。ヒカルイマイの逆転劇と、競馬自体の美しさに感銘を受けて競馬にノメリ込む。 70年代後半から血統に興味を持ち、手製の血統表を作成。以後試行錯誤を重ねつつ現在に至る。現在は競馬ラボ提供のラジオ日本「土曜競馬実況中継」でも解説を担当中。
水上学の血統トレジャーハンティング(競馬ラボ)

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