東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

[2012年7月8日]

【七夕賞】1年に1回の再会だから

自分たちだけが信じる唯一神をあがめたユダヤ人は、その頑なさの故にローマ帝国によって弾圧されてしまう。故国は潰され、拠点を失くした人々は方々に散らかるしかなかった。二千年もの間、さまよいながら、20世紀になってやっとイスラエル国家が誕生した。これら難民のごとき人々を「ディアスポラのユダヤ人」とよぶ。ディアスポラとは離散を意味するのだが。


ところが、吉祥寺にも似たような境遇の人々が徘徊しているという。名付けて「ディアスポラの青夷人」という。居酒屋「青夷」が閉店したために、忠実な常連ほどどこに行ってよいかもわからず、右往左往しているらしい。三鷹にオフィスをかまえているせいで、仕事が終わると、「さあ、青夷でもよるか」と一瞬でも頭をかすめるから、お店がないことに気づくと愕然とする。習性とは恐ろしいものだ。釣りあり、野球あり、サッカーあり、競馬あり、パチンコあり、テニスあり、ゴルフありで、雑然きわまりない集団だったが、貴重な集いの場所だった。


そんなわけで、競馬を話題に話がはずむという空間が消えたせいで、競馬の話題はただただ胸にしまっておくしかない。それでも、飲み会の機会はあいかわらずで、土曜日は昼間からワイン倶楽部などに誘われてしまった。ほろ酔いかげんでオフィスに帰り、明日のレースを検討している。七夕賞だから、「ディアスポラの青夷人」が再会する機会をひたすら夢にでも見ることにしよう。


1年に1回の再会だから、どうせならめったにない魅惑的な女性と会ったかのような、高配当の馬券にあずかりたい。近走は褒められたものではないが

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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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