元競馬学校教官・蓑田早人の蓑田塾

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ここでは全く力が違う

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こんばんは。蓑田です。

日曜日の中山で行われる京成杯オータムハンデでおそらく1番人気になるのが川田将雅騎手が乗るグレナディアガーズ。好位からの競馬を続けている馬で今回は最内枠。先ほど話したような、中山のコーナーで前をどう捌くかがポイントになりそうだ。

逃げそうなのは大野が乗るコントラチェックか、藤岡佑介が乗るバスラットレオンか、柴田大知が乗るスマイルカナか、はたまた横山和生が乗るマイスタイルか。誰が逃げるのか、どれくらい競るのか、そして川田自身はどの位置に収まるのか。普通に乗れば力は上の馬だが、考えることは多いんじゃないか。

川田は私が教官になって2年目の生徒で、私が直接教えた中では一番の成績を残している。今や誰もが認める日本競馬のトップジョッキーの一人で、私が改めてここが上手いとかこういう騎手だとかを説明する必要もないだろう。

昔話を一つすると、川田は競馬学校に入ってすぐのタイミングで怪我をしてしまい、しばらく騎乗訓練ができなかったんだ。それで周りに取り残される不安もあったんだろう。夏前に本気で学校を辞めると言い出して、最後は一家総出で説得する事態になったんだ。今の活躍を見ると、あの時にせっかくの才能をフイにしなくて本当に良かったと思うよ。

あとは、安田隆行調教師のところに入れたのも大正解だったね。安田先生は私が現役の頃にローカルでよく一緒に乗っていて、歳も私が少し上という間柄で仲が良かった。

とにかく優しい人で、それに川田の才能を見抜いて大きく育てようとしてくれていたんだろう。実は新人の頃は遅刻とかそういうやらかしが多かったんだが、安田先生は私と会っても悪いことは一切言わず、いつも良いところだけを話して褒めっぱなしだったんだ。

さて、日曜日は京成杯オータムハンデのグレナディアガーズを含めて5頭に騎乗。もちろん重賞も楽しみだが、堅いという点では7Rボーデンが一番じゃないだろうか。

新馬戦から川田が乗っていて、2走前のスプリングSで3着。武藤雅に乗り替わったラジオNIKKEI賞こそ人気に応えられなかったが、1勝クラスでは全く力が違うだろう。

日曜の騎乗一覧と評価

レース条件馬名評価
中山5R芝1600mライラスターA
中山7R芝1600mボーデンA
中山8R芝1800mルヴァンA
中山10R芝1200mブレイブメジャーB
中山11R芝1600mグレナディアガーズA


今週から秋競馬ということになり、東では中山開催が始まった。先週までの新潟と比べると、右回り・左回りの違いや直線の長さ、コーナーの角度、坂の有無など、多くの部分が全く変わってくる。

中央競馬には10か所の競馬場があり、それぞれコース形態が違う。ちょうど今週のような開催の替わり目だと、コースの違いによる得意・不得意といったところが気になるファンもいるだろう。

他の教官のことは知らないが、私の場合は自分が受け持った生徒に対して「東京競馬場はこう乗れ」とか「中山競馬場のポイントはこうだ」というような、競馬場ごとの教育や指導はしてこなかった。

そういう事は騎手になってから自分で実際に経験して掴んでいくことだと思うし、学校にいる間はどんな競馬場だろうと馬の力をちゃんと引き出す基礎の方が大切だからな。

ただ、競馬場ごとの指導はしなかったが、右回りと左回りの違いといったレベルのことは教えていた。日本の場合は右回りの競馬場の方がタイトで、コーナーは意識して乗らないと外に振られやすい。競走馬の本質的な癖もあるのかもしれないが、左回りよりもコーナーが大切になる。

右回りの方が外に振られる馬が多いということは、勝負どころで内目を捌くチャンスもあるということ。外に振られないように気を付けろ、前の馬が外に行った隙を突け、というのは右回りのコース共通の技術として教えていた。

勝負どころの内外の話だと、もう一つデビュー前の生徒に教えていたことがある。それが「関西の騎手は逃げ馬に乗った時、直線入り口で内を空けやすい。逆に関東の騎手は直線に入る時も内を閉めて乗る」ということ。

この話は私が教官になってすぐの19期生から25期生くらいまでに特によく話していたことで、東西の調教師の考え方の違いが理由。関東の調教師は逃げ馬が内をすくわれて負けるとすごく怒っていたんだ。伝統的にね。

だから、生徒には「逃げ馬に乗ってる騎手が誰かを考えて自分の作戦を考えろ」ということを話していたね。理想を言えば、東西という大きな括りじゃなく、相手になる一人一人の騎手の癖や個性を知った上で乗れると良いんだがな。


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蓑田早人・プロフィール

卓越した騎乗技術を武器に、騎手として北海道などローカル開催を中心に活躍。引退するまで、日本騎手クラブ副会長を務めるなど騎手の地位向上にも尽力。その後、競馬学校の専任教官へ就任(石橋脩騎手ら第19期生より指導を担当)。川田将雅騎手、松山弘平騎手をはじめ、吉田隼人騎手、三浦皇成騎手、藤田菜七子騎手など教え子が多くいる。

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