師走の風が骨身に沁みるわい。街を歩けば、どこもかしこもクリスマスだの年末だのと浮かれおって。若い衆は下ばっかり向いてスマホをいじり倒しとるが、そんな小さな画面の中に「真実」なんぞ転がっとらんぞ。もっと顔を上げて、世の中の空気を感じんかい。

ワシが若い頃、冬の仁川や淀で身を縮めてレースを見とった時は、こんなもんじゃなかった。寒風吹きすさぶ中、野次は飛ぶわ、ハズレ馬券が舞うわ。冷え切った体には、あの安っぽい、出汁だけはやたらと美味い「うどん」がご馳走じゃった。

湯気で眼鏡を曇らせながら、次の展開を腹の中で練る。あの現場の熱気、匂い、そして殺伐とした中にある妙な一体感。あれこそが勝負の場というもんや。画面の数字ばかり追わずに、現場の空気を、枠の並びを肌で感じなはれ。

今週の眼 ホープフルS (G1)

さて、2歳戦の大一番、ホープフルステークス（G1）じゃ。 中山の2000メートル、若駒たちの戦い。ここ最近の若い連中は、やれタイム指数だ、AI予想だと騒ぎ立てるが、2歳の若僧（馬）相手にそんなデータが通用すると思うか？ 笑わせんな。経験の浅い馬なんぞ、その日の気分や展開ひとつでどうにでも転ぶんや。

そこでワシの出番、「枠連」や。 エエか、「馬を見るな、枠を見ろ」。これがワシの流儀や。 馬連や3連単なんてハイカラな馬券が出る前から、ワシらはこの「枠」という帽子を見て銭を張ってきた。

枠連の何がエエか教えたろか。それは「保険」が効くことや。 ナウい言い方したらリスクヘッジ…いや、そんな横文字は好かん。「転ばぬ先の杖」よ。本命の馬が出遅れても、同枠の相方が突っ込んでくれれば当たりになる。これが枠連の醍醐味、人情味というやつじゃ。

特に若駒のレースは予期せぬことが起こる。強い馬が飛んでも、枠が助けてくれる。この安心感を一度味わったら、点ばかり狙うせせこましい馬券なんぞ買えんようになるわ。

今回のワシの見立て、結論を言うぞ。 赤鉛筆でグリグリに丸を付けたのは【8枠】や。

正直に言おう。ワシの眼も今回は迷うた。 最後に見えたんは「5枠」と「8枠」の二択やった。オモロイことに、5枠には横山親子、8枠には岩田親子が並んで入りおった。親子鷹の競演、いかにもドラマ好きの競馬の神様が仕組んだような枠順や。

だがな、ワシが8枠を選んだんは、単なる親子の情物語だけやない。 決め手は中身や。8枠に入った「アスクエジンバラ」、こいつはオープン勝ちに加え、京都2歳ステークスで2着という確かな実績がある。もう一頭の「オルフセン」も、レースぶりから底知れぬ奥深さを感じるわ。この二頭が揃った8枠、ここが一番盤石やと見た。

編集後記 ～ピュアな心で～

ふぅ、書き上げたわい。 予想を終えた後のこの気だるさ、嫌いやないでぇ。

さて、熱い茶でもすすりながら、押し入れから引っ張り出してきた昭和63年のプロ野球選手名鑑でも眺めるとするか。近鉄バファローズ・猛牛軍団の顔ぶれを見とると、不思議と元気が湧いてくるんや。『10.19』が懐かしいのぅ。

♪角を一振り つむじ風 バファローズ

ラジオから流れる演歌をBGMに、静かな年末を過ごすとするわ。皆も、風邪ひくなよ。