秋のG1戦線を占う上で、決して見逃すことのできない一戦、第1回
アイルランドトロフィー(G2・東京芝1800m)が幕を開ける。スピード、スタミナ、そして一瞬のキレ、その全てが問われるこのタフなコースで、次代の女王候補たちが火花を散らす。百戦錬磨の実績馬と夏を越して成長した新興勢力が入り乱れる混戦模様だが、確かな軸馬が見えている。
【有力馬分析】
◎ アドマイヤマツリ
この馬を本命に推すのに、多くの言葉はいらない。東京コースでの成績【3-2-0-1】、1800mの距離実績【4-2-0-0】。まさに、アイルランドトロフィーは、この馬のためのレースと言っても過言ではない。
前走のヴィクトリアマイル(G1)こそ7着に敗れたが、一線級を相手に先行して粘りを見せた内容は決して悲観するものではない。むしろ、あの厳しい流れを経験したことで、精神的にも肉体的にも一段と逞しくなったはずだ。レースセンスの塊のような馬で、鞍上の武豊騎手の手綱捌きも含めて、どんな展開にも対応できる自在性が最大の武器。中間も実に順調に乗り込まれており、仕上がりに不安は微塵もない。府中の千八でこの馬を外す馬券は考えられない。
〇 カナテープ
前走、関屋記念で見せた上がり32秒5の末脚はまさに「鬼脚」。あの直線一気の衝撃は、今も脳裏に焼き付いている。東京コースは【4-4-1-1】と、こちらもアドマイヤマツリに勝るとも劣らない府中巧者だ。
ハマった時の破壊力はメンバー随一で、直線が長い東京コースでその武器が最大限に活かせるのは間違いない。自慢の瞬発力を最大限に活かすのであれば、前走のような後方待機策が一番だろう。そうなると、展開に左右される脆さは常に付きまとう。前が止まらない流れになると取りこぼす危険性も孕んでおり、信頼度という点で一枚割り引きだ。
▲ セキトバイースト
同じ舞台で行われた前走の府中牝馬Sを快勝。コース適性の高さは既に証明済みだ。好位からそつなく立ち回り、直線でしぶとく脚を伸ばすレーススタイルは実に堅実。派手さはないが、大崩れしない安定感は大きな魅力と言える。
今回も先行集団を見ながらレースを進め、直線で早めに抜け出す形に持ち込めれば、そう簡単には止まらないだろう。勝ち切るまでのイメージは◎〇に譲るが、馬券の軸としては非常に頼りになる一頭だ。
△ ボンドガール
素質の高さは誰もが認めるところだが、どうにも勝ちきれないレースが続いている。今回は、名手C.ルメールが継続騎乗。これは陣営の「何としても」という勝負気配の表れと見ていいだろう。
前走の関屋記念でもカナテープに迫る上がり32秒8の脚を使っており、能力は確か。鞍上のワンプレーで、この馬が秘めるポテンシャルが完全に開花する可能性は十分にある。
【穴馬の指摘】
☆ ホウオウラスカーズ
面白いのがこの馬だ。前走の京成杯オータムHを13番人気の低評価を覆して勝利。フロック(まぐれ)視する声もあるだろうが、そうは見えない。7歳にして本格化した印象すら受ける。
もともと東京コースは【1-3-0-9】と、勝ちきれないまでも経験値の高い舞台。前走で見せた鋭い差し脚がここでも炸裂すれば、波乱の立役者となっても何ら不思議はない。人気の盲点となるであろう今回は、積極的に狙ってみたい妙味ある一頭だ。
【展開予想】
確固たる逃げ馬不在のメンバー構成。アドマイヤマツリ、セキトバイースト、リラボニートあたりがハナを窺いながら、ペースは平均か、ややスローに落ち着きそうだ。
そうなれば、直線は瞬発力勝負。好位で流れに乗れる馬に展開の利があるだろう。後方から脚を溜めるカナテープやボンドガールは、鞍上が仕掛けどころを間違えなければ届くが、前残りの展開も十分に警戒すべきだ。
【結論】
府中の千八という舞台設定、そしてレースセンスの高さを総合的に判断し、◎アドマイヤマツリの信頼度は揺るがないと見る。相手は末脚の破壊力が魅力の〇カナテープ、安定感抜群の▲セキトバイースト。名手の手腕が光る△ボンドガールまでを連下に加え、最後に一発の魅力を秘める☆ホウオウラスカーズを押さえる。
馬券は◎-〇▲△☆(①-⑦⑧⑪⑭)の馬連4点で臨みたい。