谷中公一のソコまで聞いちゃう!?[2012年1月19日対談記事]2ページ/3

田中:海外から日本に来るジョッキーを見ていて、例えば「スミヨン、スゲー!」とか言ったりはしていなかったけど、やっぱりフランスのジョッキーって結構光っているな、格好良いなとは思っていたんです。ルメール、スミヨン、オリビエ、クラストゥスとか。

谷中:そうなんだ。

田中:あと、ユタカさんは2年間くらいフランスに遠征していたらしいんですけど「ヨーロッパに行くならフランスが一番勉強になる」と言ってくれていたので。

谷中:それはフランスに決めちゃうね(笑)。

田中:そうですね。あとはビザの問題もあったんですよ。イギリスだと半年ぐらいかかったり、下手をすると取れないかもしれないということで。フランスなら、もしかするとすぐに取れるかもしれないというので、1月末ぐらいから動いたらすぐに取れて。向こうで調教師をやっている小林智先生もいるし、もし何か困ったときに頼りになる人がいた方がいいんじゃないかということで決めたんです。

谷中:年明けてから手続きを進めて、4月には渡ったんだ。

田中:そんなに早く行けるとは思いませんでした。周りの人たちの助けがあって、思ったよりも早く行けました。

谷中:向こうでの会話はどうしたの?通訳がいたの?

田中:いえ。

谷中:え、通訳いないの!そりゃ大変だわ。

田中:だから最初にお世話になったミケル・デルザングル厩舎には日本人もいないし、結構ツラかったです(笑)。

谷中:しかもフランス語の競馬用語もあるわけでしょ。俺がオーストラリアに行ったときがそうだったもん。英語は少し勉強して行ったんだけど、周りがスラングを使うし、何を言っているのか分からないから、何をしたらいいのか分からなくて。そうやってパニクったことはなかった?

田中:いえ…、あの…。

谷中:パニクらなかったんだ!さすが根性が据わってるわ。俺なんて、パニックでブルブル震えてチビりそうだったのに(笑)。

田中:アハハ(笑)。フランス語は分かりませんでしたけど、英語を話す見習いジョッキーがいたから、最初は英語ばかり喋っていました。僕、競馬学校に入る前に通っていた高校が国際高校で、英語が主でしたから。それに中学英語で日常会話ぐらいは出来ますからね。

谷中:………、カッコいい~!俺もそういうことをサラッと言ってみたいよ(笑)。ちなみにさ、日本人だからって、差別されるようなことはなかった?

田中:いえ、そんなことありませんでしたよ。街に出ると、ムカつくような態度の人もいましたけど、馬社会ではありませんでした。だってシャンティイでは、ユタカ・タケは誰でも知っていますし、ムッシュ・ヨシダといえば、超有名ですからね。岡部さん、正義さんも知られていますし、サクラさんやシンボリさんとか。

谷中:ああ、そういう方々が関係を築いているから。

田中:だから向こうに行ってから「あ、意外と日本人ってフランス競馬と関わっているんだな」というのを感じました。

谷中:それは素敵な話だね。で、向こうの厩舎ではどんな仕事をしていたの?やっぱり全部やるの?

田中:そうですね。向こうは厩務員とか助手とかの区別がありませんからね。みんなが寝藁をやって、馬の手入れをして、馬装をして、調教をして。調教が終わったら鞍を外して、また馬の手入れをして、という感じで。ジョッキーも同じことをやりますよ。

え、そうなんですか?

田中:ルメールなんかは厩舎に所属していないので、レースで乗るだけですけど、G1を結構勝っているマキシム・ギュイヨンでも同じことをしていますからね。

谷中:日本で言うと、マサヨシにボロを取らせているようなもんだよね(笑)。

田中:そうですね(笑)。また向こうのジョッキーが可哀想なのが夏なんですよ。調教とレースで、移動時間だけでも1日5時間かかるような距離を移動していますからね。タフですよね。

谷中:けど、向こうのジョッキーはそれが大変というよりも、それが当たり前って思っているんだよね。やっぱりタフだよね。パクは向こうでどのくらいレースに乗ったの?

田中:45鞍ぐらいですね。最初のデルザングル厩舎のときは、馬を預けているオーナーと専属ジョッキーの関係があったり、見習い騎手も多かったので、ほとんどレースで騎乗する機会がありませんでしたけど、ブータン厩舎に移った9月頃から騎乗数が増えました。

谷中:良かったよね。

田中:デルザングル厩舎を紹介してくれた小林先生に、厩舎を変えることを相談したとき「オフシーズンになればスミヨンやルメールがいなくなるから、もう少し頑張れば?」って言ってもらったんです。確かに厩舎の馬自体は強いので勝てる確率も高いですけど、乗れるかどうか分からないし、乗れるチャンスを求めて、レース数を使うブータン厩舎に行こう、と。

谷中:そうなんだ。

田中:ブータン厩舎に入る前、調教師に「前の厩舎ではジョッキーとして見てもらえなかったから、僕のことをジョッキーとして見ていただけるなら」っていう条件でお願いをしました。

谷中:えー、対等な立場で交渉をしたんだ。凄いじゃん!

田中:その頃は貪欲でした。だから「ジョッキーとして見れない」って言われたら、次を探そうと思っていました。

谷中:強い気持ちを持って行動していたんだね。えーと、パクは全部で3勝したんだっけ?初勝利は割りと早かったんだよね?

田中:向こうに行って1ヶ月ですね。ただ、そのレースが結構スムーズな感じで勝っちゃったんですよ。直線で早めに先頭に立って、今まで通りの感じで。初騎乗初勝利だったから「俺、持っているな」とか、勝った瞬間は思いましたけど、すぐに「全然ダメだ」と思いました。こういうことじゃない、と(笑)。

谷中 公一

1965年長野県生まれ。1985年、美浦の阿部新生厩舎の所属騎手として騎手デビュー。JRA通算成績145勝(うち障害3勝)。初騎乗は1985年3月10日にヤノリュウホウ(8着)。同年6月15日イチノスキーで初勝利。現役中に騎手生活の厳しい現実を綴った著書「崖っぷちジョッキー」を発表。現在は天間昭一厩舎の助手として活躍中。同厩舎ではレッツゴーキリシマやクラウンロゼなどを担当した実績もある。またその傍らドッグガーデン「WANだら~」経営者としても手腕を発揮している。

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