谷中公一のソコまで聞いちゃう!?[2013年3月13日対談記事]2ページ/3

それだけ世代間で差を感じていたから、同世代で1番になっても安心出来ない、と。実際にデビューしてみて、デビュー前に考えていたのと違ったことはありますか?

伊藤:夢は高く持っていましたけど、簡単には勝てないですよね。難しいなと思いました。

谷中:本当、勝つのって難しいよね。

伊藤:デビュー前に、目標を言ったりするじゃないですか。確か「50勝はしたい」みたいなことを言ったんですけど、全然(笑)。すいません、みたいな。

ちなみに現役時代は、谷中さんと一緒に遊びに行かれたりしたんですか?

伊藤:はい。谷中さんの弟弟子のカメ(亀山泰延元騎手)が同期だったんで、その関係で。谷中さんとカメに連れられて東京に行って「何て凄い世界なんだろう」って(笑)。煌びやかで、綺麗なお姉さんばっかりいて。ハマッちゃいました。


谷中:ハマッたよね、直人も。まあ、乗り役の頃は、稼ぐ額も違ったしね。

当時の金銭感覚は違ったなと思いますか?

伊藤:バカでしたね。デビュー1年目の夏に小倉に行ったんですけど、毎日のように10万ずつ下ろしていたんですよ。3キロ減だったし、関西の人たちは喜んで乗せてくれるんで。夏の小倉は日が沈むのが8時半過ぎだから、そこからムックリ起き上がって、日が昇ると同時に帰ってくるという感じでした。それで昼は暑いんでずっと寝ていて。

谷中:完全に夜行性動物だよね(笑)。ホント、恐ろしい生活だよ。あれ、直人の師匠って小林常泰先生だったよね?遊びが過ぎて先生から怒られた、ってことはないでしょ?

伊藤:それはないですね。

谷中:直人は、仕事はキッチリやってたもんね。また直人は大人しいから、俺らとは違って、そんな遊びなんかしないようなイメージを持たれてたんだよ。

伊藤:あー、そうかもしれないですね。

谷中:羨ましいよね。俺が大人しくて直人みたいな性格だったら、スマートボーイは俺に回ってきてたはずなんだけどなあ…。

性格が与える印象で、スマートボーイ騎乗のチャンスを逃したんじゃないか、と。

谷中:恐らくね。その可能性は否定出来ないな(笑)。

悔やまれますね(笑)。ちなみに、こないだの土谷智紀さんとのエピソードのように、伊藤さんにもレース中後ろから「どけどけ」と言われたりしたことはないんですか?

谷中:いや、直人とはなかったな。直人は前に行くイメージしかなかったし、後ろから来られた覚えがないもん。常にハナに行くのは、直人か中舘英二かってイメージで(笑)。

伊藤:行くイメージを持たれていましたけど、自分としては、逆に逃げはイヤでしたね。

谷中:あー、その逃げはイヤだったって、前に聞いたことがあるな。あの捕まる寸前がイヤなんでしょ?逃げていて交わされたときの直人のガッカリ感が競馬場のモニターから伝わってくるのよ。あー、ガッカリしてるな、みたいな(笑)。

イメージと違って逃げはあまり好きではなかったということですけど、伊藤さんがジョッキー生活の中で一番印象に残っているレースは何ですか?

伊藤:やっぱり最初に重賞を取ったマイネルコンドルの札幌3歳ステークスですね。そのとき2着だったジョウテンブレーヴっていう馬も同じ相沢厩舎で、しかもマイネルコンドルと同じ厩務員さんが担当していたんですよ。

谷中:え、そうなんだ。同じ厩務員さんの馬でワンツーなんて凄いよね。

伊藤:そうですよね。しかもジョッキーも同期でワンツーだったんですよ。

谷中:へー。ジョウテンブレーヴのコバテツ(小林徹弥騎手)って同期なんだ。

伊藤:はい。ジョウテンブレーヴは最初、小野(次郎元騎手)さんが乗っていたんですけど、札幌3歳では乗れなくなったんで、相沢先生から「直人、誰かいないか」って言われたんですよ。それで「同期の小林でよかったらお願いします」って言ったら「いいよ」って言ってくれて。

谷中:そういう経緯があったんだ。

伊藤:で、レースに行ったんですけど、4コーナーの回り口では、こっちもジョウテンブレーヴも手応えがいいから「さあ、行きますか」って2頭で叩き合いをして、そのまま同期でワンツーフィニッシュという。あれは面白かったですよ。あんなに余裕を持って競馬に臨めたのもなかなかないので。

谷中:しかも重賞でね。自分が先生に紹介した同期とワンツーで。

伊藤:そうですね。あと、コンドルでは皐月賞とダービーに乗せてもらえましたしね。

谷中:ダービーにも乗ってんだもんね。良いなー。

伊藤:河内(洋元騎手)さんが勝ったときですけど、僕の馬は「直線だけ頑張らせて、それで万が一があるかもしれない」っていう感じだったんですよ。それで後ろでソーッと乗っていたら、斜め前辺りに河内さんがいて、そのちょっと後ろにユタカ(武豊騎手)さんがいたんです。僕は2頭の後ろでジーッとしていたんですけど、どうやら3コーナー辺りでの僕のポジションが邪魔だったらしく、ユタカさんがギロッて睨むんですよ。

谷中:「邪魔すんじゃねえぞ!」って(笑)。

伊藤:まあ、そうやって睨まれるくらいのことは、レース中に多々あるじゃないですか。でも、その怖さが他のレースのときと違うんですよね。

谷中:本気の睨みなんだ。

伊藤:おおー…、スイマセン!みたいな(笑)。凄いオーラでしたね、あれは。

谷中:「お前の出る幕じゃねえ!」みたいな、暗黙の威圧が(笑)。まあダービーだもんな、そりゃそうだろうな。

またあのダービーって、河内さんのアグネスフライトと武豊さんのエアシャカールの差が、ハナ差だったんですよね。

伊藤:だから僕のおかげで河内さんがダービーを勝てたんじゃないかなって(笑)。

谷中:アハハ(笑)!

伊藤:でもG1って、ホント選ばれた人しか取れないのかなっていう感じがしましたね。

谷中 公一

1965年長野県生まれ。1985年、美浦の阿部新生厩舎の所属騎手として騎手デビュー。JRA通算成績145勝(うち障害3勝)。初騎乗は1985年3月10日にヤノリュウホウ(8着)。同年6月15日イチノスキーで初勝利。現役中に騎手生活の厳しい現実を綴った著書「崖っぷちジョッキー」を発表。現在は天間昭一厩舎の助手として活躍中。同厩舎ではレッツゴーキリシマやクラウンロゼなどを担当した実績もある。またその傍らドッグガーデン「WANだら~」経営者としても手腕を発揮している。

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