急に冷え込んできよったな。街ゆく若いのを見とると、背中を丸めて小さな板きれ(スマホ)ばかり覗き込みおって。前を見て歩かんかい、前を。転んでから泣いても遅いんやで。
ワシが若かった頃、冬の仁川や淀いうたら、もっと寒さが骨に沁みたもんじゃ。ハズレ馬券が飛び交うコンクリートの底冷えに耐えながら、湯気だけが頼りのお茶をすする。あれが至福の暖房器具やった。スタンドからはジョッキーへの野次が飛び交い、その熱気で身体を温めたもんや。「アホ!」「ボケ!」いう罵声すら、今思えば愛があった気もするわ。
今の競馬場も綺麗にはなったが、あの頃の「鉄火場」の匂いが消えたのは寂しいや。ワシはデジタルの数字よりも、現場の空気と、己の勘を信じる。それがワシの流儀じゃ。
今週の眼 ターコイズS (G3)
わしの哲学は一つ。「馬を見るな、枠を見ろ」。これに尽きる。
さて、今週は中山のターコイズS(G3)か。ハンデ戦で牝馬限定、荒れる要素がてんこ盛りのレースじゃな。
最近の若い衆は、やれタイム指数だ、やれAI予想だと、細かい数字ばかり追いかけよる。せやけどな、競馬いうのは生き物が走るんや。
最後は「運」と「枠の並び」がモノを言う。特にこの中山1600mいうトリッキーな舞台は、馬の能力以上に、どの枠に入るかで勝負が決まることすらある。
馬連や3連単なんてややこしい馬券がなかった時代、ワシらは枠連の「帽子」の色でレースを見ていた。枠連のええところは「保険」が効くことや。本命の馬が出遅れても、同枠のもう1頭が突っ込んでくれば当たりになる。これを「代用」と呼んで、何度助けられたことか。
個々の馬の細かい調子を見るんやない。その枠に「運気」が溜まっとるかどうか、そこを嗅ぎ分けるのがベテランの仕事や。今回は、実に匂う枠があるで。
ほな、結論といこか。わしの赤鉛筆が止まったのはここや。
理由はシンプル。まず、シングザットソング。こいつはどんなレースでも勝ち馬と差のない競馬をしよる。ちょっと頼んないけど、能力はある証拠や。 それに、今回は高野厩舎の2頭出しじゃな。「同厩舎の2頭出しは人気のない方を狙え」。これは昭和から伝わる鉄則じゃ。ナミュールがおらん今、この厩舎の勝負気配は侮れん。
もう1頭のジューンオレンジも、似たような個性を持っとる。一発の魅力がある曲者が2頭、同じ枠に同居した。これこそ枠連の醍醐味、「どっちが来てもエエ」という贅沢な布陣じゃ。この2枠は、まさに火薬庫よ。
【最終結論】
ごちゃごちゃ言わん。
今週はこの「枠」で勝負だ。
ターコイズS (G3)
編集後記 ~ピュアな心で~
ふぅ、書き上げたら肩が凝ったわ。
さて、予想も終わったし、焼酎のお湯割りでも飲みながら、ラジオのナイターオフ番組でも聞くとするか。最近はネットで何でも聴けるらしいが、ワシはあの「ザーッ」という雑音混じりのAMラジオの音が落ち着くんじゃ。
本棚の奥から、昭和50年代のプロ野球選手名鑑でも引っ張り出して眺めるかの。あの頃の選手の顔は、今の選手よりずっとゴツくて、味があったわい。近鉄の選手なんて、ほとんど『ピー(自主規制)』やないかい(笑)
