谷中公一のソコまで聞いちゃう!?[2011年07月22日対談記事] 3ページ/3

谷中:でもデビューした年から、終いまで溜めて、終いを活かすレースをよくやっていたでしょ?

伊藤:はい。そうですね。

谷中:それが素晴らしい、信念を持ってやっているって評判になっていて、それで工真のレースを見たら本当にそうだったから、上手く乗ってるなあと思って。そういう話が2年目に広まったのもあって、成績もグーンと伸びたんじゃないかな。調教師の指示に合わせて乗らないといけないこともあるし、なかなかそういう自分の信念を貫くって難しいんだけどね。まして減量だと、前に行かないといけないケースも多いしね。

伊藤:そうですね。

谷中:でもそうやって人の意見ばかり聞こうとし過ぎると、型にハマっちゃって身動きが取れなくなっちゃうんだよね。で、だいたい負のスパイラルに入っていって。そこで飛び出せるか飛び出せないかが芯の強さじゃない?ただ指示されたことにこだわって、萎縮して乗ってきちゃうんじゃなくて「この馬にはこの乗り方が合っているんだから、こう乗ってみよう、あとで怒られてもしょうがない」とかさ。

伊藤:そうですね。もちろん全部自分の思うようには出来ないですけど、仮に「前に行ってくれ」って言われていても、もし出遅れちゃったら、無理に前に行こうとしても仕方がないじゃないですか。そういう時は自分の思う乗り方をしてみよう、と考えたりします。

谷中:このキャラクターだから、怒られてもフワンフワン漂っていればいいよ(笑)。工真って、いくら怒られてもダメージないでしょ(笑)?

伊藤:いや、そんな事ないです(笑)。凹む場合もありますよ。

谷中:え?あるんだ。じゃあ、気持ちの切り替えはどう?上手い方だと思う?

伊藤:いえ、何か言われると、すぐには切り替えられないです。やっぱりちょっと残っちゃいますね…。

谷中:でもそれは、よっぽどの事を言われた時でしょ?ジョッキーって、自分では「ちょっと良いレースしたなー」って思っていても、大概怒られたりするじゃん。周りからの評価は「なんであんな乗り方したんだよ」とか「なんであんな所にいたんだよ」とかさ。そういうのも気になる?

伊藤:自分で納得していれば、そういうのはそんなには気にならないです。

谷中:ああ、自分の乗り方に納得していれば周りの声は気にならないんだ。じゃあ、自分でも「これはマズい乗り方だったな」っていうときは。

伊藤:そういう時は引きずったりしますね。


そういうマズい乗り方だったな、というレースをビデオで見直したりはするんですか?もしくは、あんまり失敗したことばっかり考えていてもよくないから、何か違う事をして気分転換しよう、とか。

伊藤:やっぱり何か違うことをして気分転換するよりも、レースを見て反省する方が大切ですね。むしろそっちの方が、自分にとって気分転換しやすいかなっていう感じです。


どっぷり反省して、それで気持ちの整理をつける、と。

伊藤:そうですね。

谷中:そうなんだ。ところでさ、そうやって最初から決めていた自分のスタイルやイメージ通りの乗り方は続いているの?もちろん馬に合わせるっていうのが一番だと思うけど、逃げスタイルとか、先行して差し、後ろからじっくり溜めて終いに追うとか、ジョッキーって自分の型が決まってくるもんじゃん。自分にはどれが合っていると思う?

伊藤:僕は終いを活かす競馬の方が、馬の能力を引き出せると思って乗っています。もちろん、乗せてもらう馬の個性や、競馬場のコース形態や馬場状態も考慮して臨機応変に乗っていますけど。

谷中:でも、それが大きなセールスポイントだよね。工真は確実に終い持ってこられる、っていうイメージが定着して、それで調教師がそういう騎手を探しているとき、工真に依頼しようって思うだろうしね。…そういえば今、夏じゃん?自分の腕を磨くという意味で、ジョッキーの激戦区でもある北海道に飛び込んで行きたいと思う?

伊藤:あー、思いますね。関東・関西から上手い人たちが集まるので、そういうところで経験を積んでみたいと思っています。


今年は初めて長期的に小倉競馬にも参戦されましたよね。向こうのレースはどうでした?

伊藤:東京や中山とは、またレースの流れが違いました。勉強になりましたね。


技術向上のためにいろいろとされているんですね。

伊藤:まだまだ全然です。もっと上に上に行かなきゃ、という気持ちで乗っています。


今年から減量が取れましたけど、これまでとの違いは感じられますか?

伊藤:やっぱり、減量があるのと無いのとでは、勝つチャンスの数が全然違いますね。


騎乗依頼が少なくなっている、と実感されたり。

伊藤:そこは凄く大きいところだと思います。今年はその中でどれだけ踏ん張れるかにかかっています。減量が無くなって、トップジョッキーと同じ条件の中で勝ちに行くのは簡単なことではありませんけど、そこで結果を出していかないといけないので、今まで以上に1鞍、1鞍を大切に乗るように心がけています。


頑張りどころですね。

谷中:けど、今のままのスタイルを続けることが大切だよ。焦っていろいろ動いても、それがいい結果に繋がるとは限らないからね。それは遊びでもね(笑)。遊ぶときはトコトン遊ぶ方が不思議と成績も良くなるから。切り替えが大切なんだよね。

伊藤:はい(笑)。

谷中:とか言いながら、俺はジョッキーの頃、遊びにスイッチを切り替えたまま、仕事のほうに戻らなくなったんだよね(笑)。まあ、そのおかげで「崖っぷちジョッキー」を出版するに至ったんだろうね(笑)。

伊藤:アハハ(笑)。


えー、まだまだお話は尽きませんが、そろそろお時間なので、最後に改めて、工真騎手が今年はどの様な騎乗を心がけていきたいと考えているか、聞かせてもらえますか?

伊藤:いろんな先生から頂いたひとつひとつのチャンスを活かして、先生が望んでいる以上の結果を出すことを積み重ねていきたいと思います。最近では、田辺(裕信)先輩が10年目で一気にブレイクしていますし、柴田大知さんも、勝てない時代があったのに今年G1を勝っていますし、騎乗数も増えていますからね。自分にも、いつそういうチャンスが来ても力を出せるように、チャンスが来ることを信じながら頑張っていきたいですね。

谷中:……、素晴らしい!若者のしっかりした信念を聞くと気持ちいいよね。俺も若い頃はそうだったなって気付かされたもん。確かにチャンスはいつ来るか分からないけど、その信念を持っていれば、絶対チャンスは来るよ。

伊藤:そう信じて頑張ります。


谷中:俺も工真には大きく羽ばたいてもらいたいし、しっかり土台になって支えてあげたいと思っているからさ。何か困ったことがあったら、いつでも声を掛けてよ。

伊藤:はい、ありがとうございます。

自身の騎乗スタイルを貫き、2011年5月よりフリー騎手として活躍の場所を広げる伊藤工真騎手。今年は減量も取れて、勝負の一年になる一方で、今後の活躍に期待が掛かる伊藤工真騎手をうまスクエアも応援して行きます。

伊藤工真
伊藤工真プロフィール
1990年2月26日生まれ。日本中央競馬会(JRA)騎手。2008年、美浦トレーニングセンターの古賀史生厩舎の所属騎手として騎手デビュー。初騎乗は2008年3月1日にトウショウブリーズ(9着)。同年10月26日サザンスターディで初勝利。2011年5月から古賀史生厩舎を離れ、フリー騎手として活躍中。
谷中 公一

1965年長野県生まれ。1985年、美浦の阿部新生厩舎の所属騎手として騎手デビュー。JRA通算成績145勝(うち障害3勝)。初騎乗は1985年3月10日にヤノリュウホウ(8着)。同年6月15日イチノスキーで初勝利。現役中に騎手生活の厳しい現実を綴った著書「崖っぷちジョッキー」を発表。現在は天間昭一厩舎の助手として活躍中。同厩舎ではレッツゴーキリシマやクラウンロゼなどを担当した実績もある。またその傍らドッグガーデン「WANだら~」経営者としても手腕を発揮している。

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